「あ、大輔クン!」

 不安そうだった、岳の表情が笑顔に変わった。

「お前、ボ〜ッとして歩いてっからだぞ!」

「うん、ごめんね。お兄ちゃん達は?」

「あ、分かんねぇ…」

「…じゃあ、ボク達二人とも迷子?」

 大輔の返事に、岳は小さなため息を返す。

「ま、なんとかなるだろ!せっかくだし、二人で楽しもうぜ!」

「…それもそうだね」
 
 
 
 
 

「あ、ワタアメだ。イイ匂いー…ねえ、大輔クン、買って?」

 岳は大輔の服の裾を握り締める。

「荷物、お兄ちゃんが持ってるから、ボクお金ない…ダメ?」

 ウルウルした瞳で上目遣いに見つめられ、あの大輔が逆らえるわけがない。

 大輔が岳を"天然微少年"だと思う由縁はここにある。

「…お前、やっぱ、分かってやってるだろ…」

「ん?」

 岳はニッコリと笑顔を浮かべたまま、大輔を見つめている。

「…わあったよ」

 大輔はため息混じりにつぶやいて、自分の財布に手を伸ばす。

「ほら」

「ありがと。ねえ、花火見ながら食べよ〜?」

 岳は大輔の腕を引っ張る。

「こら、分かったから、もちょっとゆっくり歩け」

 人混みで急に引っ張られた大輔は、バランスを崩しながらも岳に逆らうことなく歩いていく。
 
 
 
 

 大輔と岳は花火会場から少し離れた公園にいた。

 人の姿はなく、辺りはとても静かだ。

 落ち着いて花火を見るには絶景の場所。

 夜空には爆音と共に大輪の花が咲いている。

「キレイだねぇ…」

 岳は空を見上げて花火に見入っていた。

「あ、あのさ、岳!」

 周りには誰もいない、つまり二人っきり。

 大輔にとっての、最大のチャンスかもしれない。

「なぁに?」

 でも、この瞳に見つめられるとどうも固まってしまうらしい。

「あ、の…俺…お前のこと…」

 真っ赤になりつつも、男、大輔、勇気のデジメンタルの名にかけて決意を固める。

「ん?」
 
 

  -ドォォン!-
 
 

「------だっ!」

 ……………。

「…ごめん…聞こえなくて…もう1回言ってくれる?」

 岳は悪くない。

 悪いのは、まさに今!のタイミングで上がった巨大な花火。

「…いや、あの…なんでも…ないです」

 …勇気のデジメンタルの効き目は1度限りだったらしい。

 
 
 
 
 
 

「おいし♪」

 ベンチに座ってワタアメを食べる岳。

「大輔クンも食べる?」

 そう言って差し出されたワタアメをやけ食いする大輔。

「あーそんなに食べちゃダメだよぉー!」

「うるせー!これが食わずにいられるかぁー!」

「…?大輔クンって、ホント面白いね」

 岳のニコやかな微笑みが、大輔にとって今はとても心に痛い。

「あ…」

「た、岳!?」

 一瞬、大輔には理解不能なことが起こった。

 大輔の頬についたワタアメを岳が舐めたのだ。

「…あ、いつものクセで…ごめんね。イヤだったよね」

 大輔は真っ赤にした顔をブンブンと左右に振る。

 ところで、いつものクセというのは…?

「あ…なんだよ。お前もついてる」

 大輔は自分の頬を指差して岳に知らせる。

「え?ホントに?どこ?」

 岳は大輔を見ながら自分の頬を触わる。

「違う。こっち…」

 大輔は微笑みながらそんな岳の頬に手を伸ばす。

 岳も、大輔に任せるように瞳を閉じる。

「っ!?」

 そんな岳に大輔の心拍数が跳ね上がる。

 思わずキョロキョロと周りを確認してしまう。

 大輔の頭の中に浮かんでは消える考え。

 これは…"遠慮なくいけ"ということか…?

 今まで耐えてきた俺への神様からの思し召しに違いない!

 勇気のデジメンタルにかけて、俺はやるぞ!!

 (この間、0.01秒)

「岳!」

 岳が返事をする前にその口唇に自分のそれを重ねる。

 …というよりはぶつけるといった方がいいのかもしれない。

「っーーー!」

「もー痛いよ、大輔クンー」

 岳は涙目で大輔を睨む。

「あ、の…その…」

 大輔のさっきまでの勢いはどこへやら。

「今のって…ねえ、もういっかい、ちゃんとしてみる?」

「えぇ!?そ、それって…」

 岳はどこか楽しそうに微笑んで、その青い瞳をゆっくりと閉じる。

 大輔は岳の肩を掴んで、今度こそゆっくりと口唇を重ねる。

 大きな花火の咲く音も、今の二人には…聞こえていないみたいだった。
 
 
 

 …この際、震えまくってた大輔には気づかなかったことにしよう(笑)
 
 
 
 
 


300HITの如月サマのリクエストです。
遅くなってごめんなさい。
これ書いてる時、BGMは延々に夏祭り(byジッタリンジン)でした(笑)

そして、遅いわりにたいした物じゃなくてすみましぇん(泣)
一緒にお台場に遊びに行った時に思いついたネタを話したら、そのままリクエストされました(笑)
CP指定はヤマタケだったのですが、書いてるうちに大輔があまりに可哀想になってしまって…。
ヤマタケ&大岳の2パターン書きました。
お好きな方をご覧ください。

しかし、大輔編…長くなりすぎたんですよ…。
だから、少しだけカットしちゃいました(笑)
カットした分…読みたい人はコチラからどうぞ。

あ、モデルにしたショッピング街の近くにダークタワーそっくりの建物があります。
やっぱり、これがモデルなんでしょうか?
そして、ここの駅に某スタンプラリーのタケルンがいたんですよぉ〜!(萌)

(C) 200009026 志月深結

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