共働きの両親に代わって、小さな頃から、大事に、大切に育ててきた。
「巴兄」

 …この仕草がいけない。
 俺を狂わせる。
 この瞳が、この口唇が、この声が…俺を狂わさせるんだ…。
 いつ頃だったろうか?
 この想いに気付いたのは…?
 鋼を…弟として見ることは出来なくなっていた。
 かといって、この想いを言ってしまえば、鋼は俺から離れていく。

 そんな想いを、俺は…抱いてしまった。
 

Together With…―The Season For Love―
 

「あ」
 学校について、椅子に座った途端に思い出した。
「どした?」
 横の席に座っていた片端が、俺の方を見る。
「…お前に頼まれてた写真。忘れた」
「って。おい、こら!あれがねぇと、困るんだよ。締切、近いんだぜ!?」
「そんなに大事なら、俺に頼むな!…とにかく、放課後、ウチに寄ってくれよ」
「…そういや…お前の家に行くのって初めてだよな。これでやっと、巴自慢の鋼クンが見られるワケだ」
 自慢なんかしてない…いつだって、人に見せないように気を付けてたんだ…。
 でも、今回はしょうがないな。
 

「ただいま」
「巴兄!お帰りなさい…誰?」
 俺の後ろの片端の姿を見つけた途端、鋼の笑顔は怪訝そうな表情に変わった。
 …予想通りの反応。
 可愛すぎるよ、ホント。
「…鋼…チャン?」
 片端が驚くのも、大体予想はつく。
 想像してた鋼と実物は全然違ってただろ?
 こう言うと、鋼は怒るけど…並大抵の女なんかより、ずっと可愛くて、綺麗で…。
「クンだ!…アンタこそ…誰?なんで、巴兄と一緒にいるの?」
「俺は荒木片端。巴の友達。今日は巴に頼んでた写真を取りに寄らせて頂きました。これでいい?」
「…うん」

「巴が自慢するだけはあるよ…あいつ、もてるだろうな。男女問わず」
「自慢なんかしてないだろ」
「…そうか?鋼の話してる時は、いつも自慢気だぜ」
 …うわ…無意識…?
 これでも抑えてるつもりなんだけどな…。
「…これでいいんだよな。写真」
 平然を装って、机の上の封筒を片端に渡す。
 頼まれてた写真。
「サンキュ」
 片端はフリーのカメラマンとしてデビューしているけど、撮る写真は風景や動物。
 今までに特定の人物は一人も撮ったことがないって言っていた。
 自分の家に暗室を造っておきながら、テストをサボって撮影旅行なんて行くから父親の怒りをかって、今はカメラ禁止にされてるらしい…。
 そんなんでこの男が写真をあきらめるわけもなく、おかげで俺がカメラ屋に行かされるハメになるんだ…。

「んじゃ。また、明日な…今度、どっか遊びに行こうぜ。鋼チャンも誘ってさ」
「クン!」
 リビングの方から鋼の叫び声が聞こえた。
 …相当、気にしてるな。
「鋼に合わせなきゃ、機嫌直らないよ」
「…考えます」

 次の日、教室に入ると、すぐ片端が俺に声をかけた。
「…で。考えた末に遊園地?安易だね。安直すぎる」
「小五だろ?ちょうどいいじゃん」
「アマイ!最近の小学生の行動範囲を分かってないね。玉突き、クラブは当たり前。こないだなんか、友達と遊んでたら、逆ナンされて六本木のバー行ったって」
 さすがにその話を聞いた時はキレたよ。
 一ヵ月間、外出には俺同伴にしたもんな…。
「…そんなの鋼だけだろ?ま、確かに考えもんだわ…なんか、俺等よりリッチな生活してんじゃねぇの?…じゃあ、鋼が好きな場所とか知らねぇ?」
「さぁね?」
 当然、知ってるさ。
 でも、片端に教える義理はない。
「…なぁ。なんで、そんなに必死になるワケ?」
 片端も…他の奴と同じなのか?
「せっかく遊びに行くんだから、みんなが楽しめる方がいいだろ?」
「…ジョイポリスにでもすれば」
 良かった。
 片端は他の奴とは違う。
 俺達を対等に見てくれている。
「は?」
「鋼が好きな場所って、お台場周辺だし、ジョイポリスだったらちょうどあるし、いいんじゃない」
 落ち込んだ時とか、必ず海見に行ってるもんな。
「…って。お前、知ってるんじゃねぇかよ!?」

「土曜日?…いいよ。空けてあげる」
 空けてあげるって…。
「用事あるの?」
「ん…なんか。佐伯達が空けとけって言ってた」
「佐伯?」
 今までに、聞いたことない名前だよな…?
「クラスの女子。なんか、誕生日だから、みんなでどっか行くんだって」
 ふぅん…みんなで…ね…。
 こんな…疎外感、感じても仕方ないのに…ただの子供の連帯感だろ?
「でも、いいよ。オレ、巴兄と出掛ける方が好きだもん」
 鋼は知らないだろう?
 その何気ない一言が、俺を最高に嬉しくさせる。
「じゃあ、いいの?片端にもそう言っとくよ」
「片端って…この間の人?やっぱり、あの人も一緒に行くの?」
「そ、アイツのオゴリだから」
 俺の分もオゴらせてやる。

…土曜日…

「…鋼って…絶叫マニア?」
 片端が蒼白い顔で、俺の肩をつかむ。
「あ、俺、言わなかったっけ?鋼、絶叫系にしか乗らないよ」
「ねぇ!巴兄!!次はあれっ!」
 鋼は無邪気な顔をして、レール系のアトラクションを指差す。
「ハイハイ」
 そうは言ってみたものの…さすがに、そろそろヤバイかも…。
「鋼君!」
 不意に俺の後ろから少女の声で鋼の名前が呼ばれた。
「あ、佐伯達も来てたんだ」
「…鋼君の用事って、お兄さんと遊ぶことだったの?」
「うん?だから?」
「…そう…なんだ…」
 感覚的に分かった。
 この子は鋼が好きなんだと。
 俺と…同じなんだと…。
「…そういえば、佐伯、今日が誕生日なんだよな。オメデトウ」
 鋼は屈託のない笑顔を佐伯という少女に向ける。
 ダメだ…そんな風にするから…周りが期待するんだ。
 鋼は無邪気すぎる。
 心を開いた相手に対する無邪気さが、人を惹き付け…離れられなくする。
「うん…ありがとネ」
 急に…怒りが込み上げてきた。
 どうして、鋼は俺だけを見ない?
 あの笑顔が、俺以外の奴に向けられるなんて、許せない。
「鋼!アレ乗るんだろ?先に行くよ」
「巴兄!?待ってよ!じゃあ、佐伯、またね」
「…うん…」
「あの子?今日、呼ばれてた子って?」
「うん」
 横目で少女を気にしながら、鋼は素直に頷いた。
「呼ばれてた?」
 …余計な詮索をするなよ…片端。
「誕生日なんだってさ、今日」
「じゃあ、悪かったんだな。今日…」
「平気だよ。オレは、巴兄と一緒の方が楽しいもん」
「…へぇ…」
 

「えっと…片端…さん。今日は、楽しかった…です」
「機嫌が直ってなによりです」
 片端は笑いながら、鋼の頭を撫でる。
「…じゃあ…片端、また、明日な」
 ダメだ。
 見てられない。
 鋼が俺以外の奴に微笑みかけるなんて…俺以外の奴が、鋼に触れるなんて…耐えられない。
 どうすればいい?
 俺はこのまま、嫉妬に狂い続けるのか…?
 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うん…いいよ。明日だろ?空いてる…うん…十時に駅で…うん、じゃあね」
「…電話?誰?」
「碧から。明日、出かけようって」
 碧君…ね。
 一条碧。
 鋼の幼なじみで…鋼にとって、かけがえのない人物であることに、違いはない。
 お互いに両親が家に不在がちなので、どこか共感する所があったんだろう。
 俺にとっては…あまり、歓迎しない人物だけどね。

「いってきま〜す」
「あんまり遅くなるなよ」
 この間みたいなことは、もう二度と嫌だからな。
「うん」
 鋼は元気良く、玄関を飛び出す。
 

「まったく・・・」
 …もう、とっくに十二時をまわった。
 あれほど、遅くなるなって言ったのに…。

―PRUU PRUU PRUU PRUU―

「…はい?」
『あ…巴さん?碧ですけど』
「今、どこにいるの?」
『っと…横浜なんだけど…あの…』
 横浜?
 …もうすぐ、終電…もう、終わってないか?
「…鋼は?」
『あ、えっと、今、ちょっと…トイレ行ってて』
 少し、舌にもつれる喋り方・・・。
「…碧クン…酒、入ってるだろ!?鋼はっ!?」
 何やってんだよっ!
 鋼はメチャクチャ酒、弱いんだぞ!?
 ウイスキーボンボン一コで酔う奴なんて鋼しかいないだろ。
 …その前に、小学生だろ!?
「いるんだろ。鋼、出して」
「…はい」
『あん?だぁ〜れ?』
 ダメだ。
 完全に酔ってる…。
「鋼。早く帰れって言っただろ」
『あれ〜?巴に〜い?どしたのぉ?』
 …話に…ならない…。
「碧君に替われる?」
『はぁ〜い。碧にだってぇ〜』
『…ごめんなさい』
「もういいよ。それより、今、横浜のどこ?」
『あ、JRです』
「二人とも、今から迎えに行くから、絶対にそこを動くなよ」
 俺は電話を切った後、すぐにタクシー会社へ連絡した。

「…本当に、ごめんなさい」
 駅の切符売場の所に二人はいた。
 …鋼は、完全に酔い潰れてる…。
「ったく…碧君。家に連絡した?」
「…二人とも、いなくて…」
「そう…鋼がコレじゃあ、一緒に待てないから…今日はウチに泊まりな」
「うん」
「あ〜ん?あに?かえるの〜?もっとあそぼぉよぉ」
 鋼は碧君に寄っかかったまま、能天気な声を出す。
 …全く…人の気も知らないで。
「あおい〜。ねぇ、さっきの〜もっとしよ」
「え…や、鋼、今度な!」
 碧君の顔色が変わった。
「碧君?」
「あ、何でもないから」
 それは、何でもないって顔じゃないよね。

「鋼?…着いたよ…眠ってるの?」
 俺の背中で眠る鋼。
 本当に無邪気な顔して…自分がどれだけの魅力を持っているかなんて、全然、気付きもしない。
 俺がこの想いを抑えるのに、どれだけ苦労してるか分かってるのか?
「碧君。この部屋使って…今日は、もう寝るんだよ」
「…はい」

「う…ん…」
 鋼を俺の部屋まで連れて行き、ベッドに横にした時に、鋼の瞳が開いた。
「…目が…覚めた?」
「…碧はぁ〜?オレ、さっきの、もっとぉ」
 まだ、酔ってる…どれくらい飲んだんだか。
 それに…さっきって一体、何をした…!!
「…」
 目の前が、一瞬にして暗くなった。
 鋼…自分がしている事が分かっているのか?
 まさに、青天の霹靂。
「は…がね…?」
「もっとぉ…気持ちよかったの…ねぇ?」
 …そう…彼も鋼をそういう目で見てたワケだ。

「碧君…ちょっといいかな」
 俺はドアを閉めて、壁に寄り掛かる。
「はい?」
 碧君はベッドの上に座る。
「…鋼と出会って…四年…だっけ?いつも、鋼が迷惑ばっかりかけちゃって悪いね」
「ううん。別に迷惑じゃないし、それに…」
 それに…何?
 俺は、その後を聞き出すためにここに来たんだ。
「うん?それに?」
「それに…鋼は…親友だし」
 親友…上手い逃げだね。
 でもね、友情と恋愛の境界線なんて、あってないようなものなんだよ。
「親友か…ふぅん…君は親友に友情じゃなくて、愛情を持つんだね」
「!!な…何言ってるの?巴さ…ん」
「鋼は、君に友情しか持ってないのは十分知ってるだろ…どうして急に焦り始めた?最近は頻繁に鋼を俺から離してくれたし…確かに、君のおかげで鋼は色々なことを知ったよ。全部、俺に報告してくれてたよ。今日のことも…躰に教えてくれたようだし…」
 似たような台詞を、何度言っただろう。
 それとも、鋼に…本当の親友が出来るまで…言い続けるのかな。
「あ…れは…俺、酔ってて…」
「酔った勢い?冗談はやめてくれないか?酔っちゃいないだろ?君は鋼が極端に酒に弱いのを知ってるからね…ブランデー入りのお菓子やケーキなんてコンビニでも手に入る」

 沈黙…。
 この沈黙が、全て語っていた。

「…そうだよ。俺は鋼が好きだ!親友のフリなんて、もうコリゴリさ」
 碧君の顔色が豹変した。
 化けの皮が剥がされる瞬間ってのは、いつも、誰でも同じだ。
 本当の自分を曝け出すことにより、思ったことが素直に口から出る。
 その姿は面白い程、単純で醜い。
「鋼は本当に可愛い…こんなに早くばれるんだったら、キス以外の事もしとけばよかったよ!」
「…俺は、かなり、抑えてるんだよ…」
 今までの奴は、君と違って行動に出なかった…その前に全部、潰してたんだけどね…。
 今回は…俺のミスだ。
「もっと早く、潰してればよかった…気分が良いだろ?」
「悔しそうですね…自分だって、そうしたかったんだ?」
「…そうしたかっただって?君は、勘違いしてるようだね…鋼に手を出したら、傷付くのは鋼自身だ…そんなこと、俺がするワケないだろ」
 鋼が、俺を受け入れたら…話は別だけどね。
「自分だって同じだろ?なぜ、シラフの鋼にキスしなかった?わざわざ、酔わせなくたって良かったはずだ。それとも…親友のポジションまでなくすのが恐かったのかな?」
「…っ!!」
 ビンゴ…かな。
「俺も、君には鋼の親友でいて欲しいんだ…鋼は自分から君のことを言ってきた…初めてだよ。鋼が本気で心を開いた友人はね…でも君は、その思いを粉々に打ち砕いた。その代償は払ってもらわないと…ね」
「代償?何言って…」
「君に脅しは効かない。暴力は鋼に嫌われるしね。君が不利になるものは何もない…鋼以外はね」
「何を…?」
「ゲームをしようか。君が勝てば俺は口出ししない。だけど、俺が勝ったら…鋼には今後一切近付くな!」
 良い条件だろ?
 君が勝ちさえすれば、今まで通り鋼の親友をキープできる。
 勝てれば…だけどね。
「ゲーム…その内容は?」
「簡単だよ。同じ日に鋼を誘う。そして、鋼を誘えた方が勝ち」
「どうせ俺には時間がないんだ…いいよ。じゃあ、次の休み…四日後の祝日でどう?」
「?…君がそれでいいなら…俺はいつでも」
 時間がない?
 なんのことだ?
「お互い鋼を誘うのは明日以降。それでいいんだろ?」
「あぁ、楽しみだよ…」

 真夜中になっても、俺は眠れなかった。
 傍で眠っている鋼を…メチャクチャにしたい。
 そんな衝動を抑えるのに必死だった。
「…ん」
「起きた?碧君なら帰ったよ」
 さっき、俺にキスしたことなんて覚えてないんだろうな。
「巴兄…俺、どうしてたのかな…頭、痛くて…」
 やっぱりね…。
 そう思うと、苛立ちにも似た嫉妬心が膨張した。
「鋼…どうしたら…俺を、俺だけを好きになるんだ?」
 窓の外の、大きな月が鋼を照らし出す。
 淡くぼやけた月光が、鋼の姿を一段と綺麗に演出していた。
 それが、俺の気持ちを昂めた…。
 その衝動は、夢に見たものだ。
「何?…聞こえな…っ!!」
 俺は…信じられない行動を…鋼に…キスをしていた。
「ともえ…に?」
 ダメだ。
 こんなことをしたら、鋼は俺の前から消えてしまう…でも、もう…抑えられない…この欲望は…止められない。
「俺は、怒ってるんだよ」
 鋼のパジャマを脱がし、ベッドの上に押さえ付ける。
「っ…ごめん…なさ」
 鋼の瞳…脅えてる…?
 俺を…恐がっているのか?
「…恐い?…そんな瞳で俺を見てもダメだよ」
 俺は…もう、止まらない。
「かわいいね、鋼…。自分でココ、いじったりする?…まだ、分かんないかな?」
 何度となく見ているはずなのに、こんなにも俺を煽る躰。
「ひぁ!…っう、あ」
「…へぇ、ちゃんと勃つんだ。ほら、こうすると…気持ち良いだろ?」
 俺は、まだ成長しきれていない鋼の性器を口にくわえる。
「はっ…っつ…い、た…い」
「痛い?…そうだね。鋼はまだ子供のままだ…ちょっと痛いかも知れないけど、大丈夫。すぐに気持ち良くしてあげるから…」
「!やっ…だめ…痛い!…あ、あぁ!!」
 鋼の声が耳を貫く。
 あまりにも簡単に達してしまう、敏感な躰。
 何が起こったのかすら分かっていない鋼。
 息をあげて、俺を見る瞳が、少なからず反抗していた。
「…初めてだね…いっちゃったの…クス、可愛いよ」
 俺は、鋼の胸元にキスをする。
 赤く残るような、熱いキスを…。
「はぁ…っ…と、もえ…なに…これ…?」
 鋼は虚ろな瞳で俺を見る。
 その瞳が…俺を狂わせる。
 この純粋で無垢な心を、メチャクチャにしてやりたくなる。
 何にも染まっていない、透明な鋼を、黒く濁った俺の色で染めてやりたい。
「知ってる?俺が、どんなに鋼を欲しがってたか…もっと早く、こうしていれば良かったんだ…そうすれば、鋼は俺しか見なくなる…俺だけを…見るんだ」
「巴兄…?イ…ヤ…離して…やだ、怖い…なん、で?」
 言葉とは裏腹に鋼の躰は俺の思い通りに変化する。
「足…広げてごらん」
 露になった鋼の躰に、もう一度口唇を近付ける。
「!!…やぁ…やめっ…」
 小刻みに震える鋼の躰。
 もうすぐ…鋼は俺のモノになる…俺だけの…鋼になる。
「いあぁ…あ、あ…やだ、痛い…ね…やめ…て」
「止めて欲しい?…だったら、俺にも同じことやってみて…」
「……同じ…コト?」
「そう、俺のも…ね」
「…!…」

「と…もえ…に…ぃ」
 鋼は俺の言う通りに動く。
 その間も、俺は鋼に愛撫し続ける。
「ん?」
「も…苦…し…やめ…」
「…止めないよ…鋼だって、もっとして欲しいだろ?」
「…オレ…違う…よ…オレ…」
「何が違うの?俺は、鋼が嫌がることなんてしない…ほら、鋼だって感じてる…指、入れてみようか?」
「ひっ!…あ…何!?そんなトコ!ダメ、こわいよ…とも、え…」
 俺から逃げようと、躰を反らす鋼の腕をつかむ。
「俺が、恐い?」
「…オレ…なんか…違う、の…オ、レ…こんなの…オレ、どうなる…の」
「こんなに気持ち良いの、初めて?…クス…大丈夫だよ。これからは、毎日でも気持ち良くしてあげるよ」
「…巴…兄…」
 鋼は息を切らしながら、俺を見つめる。
 虚ろな瞳で…俺だけを。
「まだ、終わりじゃないよ…これからだ…もっと、気持ち良くしてやる」
 俺の望んだ…待ち望んだ瞬間。
「何…するの?」
「…何かな?」
 俺だけの、鋼に…。
「ひあっ!!ぅくっ、はぁ、痛っ…だ、め…やだ…どうし…て」
 鋼の小さな躰を抱きしめる。
 息が止まる程、強く、激しく…熱い躰を重ね合わせ、言葉もなく、欲望のままに求める。
「いやぁ…だめ…っ…やめてぇ…」
 俺の背中に回された手に力がこもるのが分かった。
 爪を立てて、俺にしがみつく。
 そんな鋼をもっと見ていたい。
 …俺しか知らない鋼を見つけたい。

「…鋼」
 全てが終わって、やけに冷静な自分がいる。
 自分の欲望のまま、何も知らない鋼を抱いた。
 …無理やりに…。
「…やだ…さわるな…らい…キライだ!巴兄なんて、大嫌い!!」
 泣きながら、俺の部屋を飛び出す鋼。
「…っ」
 …予想していたことだろう?
 何を今更…。
 
 

―トントントン―

「鋼…?」
 次の日になっても、鋼は部屋から出てこなかった。
「朝食、ココに置くからね…食べられたら食べるんだよ…俺、部屋にいるから」
 学校になんて行ってられない。
 今、俺が目を離したら鋼は何をするか分からない…。
 昼を過ぎても、鋼の部屋のドアは開かなかった。
 朝食にも手を付けていない。
「鋼?…鋼!いるんだろ!?」
 俺はドアをノックし続ける…物音一つない…。
「入るよ!」
 !!
 …は…がね…?
 言葉という言葉が、頭から消えた。
 鋼の姿…裸のまま、ベッドにもたれ掛かるようにして座り、光のこもらない瞳で天井を見つめていた。
「鋼…鋼!今が何月だと思ってるんだ?」
 凍えるように冷えきった躰。
 蒼白く、血の気の失せた顔…。
 俺は、鋼の躰を毛布で包み、バスルームへ運ぶ。
 鋼をバスタブに入れて、シャワーをかける。
 しばらくして、鋼の躰が少しづつ体温を取り戻していくのが分かった。
「鋼…大丈夫…鋼?」
「…」
 鋼は、言葉もなく…ただ、虚ろな眼差しを俺に向ける。
 その瞳に、全てを否定された感じがした。
 あんなこと…しなければ良かった…そうすれば、鋼をこんな目に遭わせなくて済んだんだ。
 大人げもなく、挑発されて…碧君に嫉妬した俺…。
 その結果、一番怖れていたことを…。
 

「…オレ…躰…変、なの…?」
 

「…鋼?」
 シャワーの音で消えそうなくらい細い声。
 俺の腕をつかむ、細く白い腕。
「ねぇ…昨日…なにしたの?…オレ…変だよぉ…」
 今度は縋るような瞳で、俺を見つめている。
 その瞳は…どういう意味?
 俺は自分勝手な男だから、その瞳も、その言葉の意味も都合良く考えてしまうよ?
 …いいんだね?
「鋼は、俺なんか大嫌いなんだろう?」
「…嫌いだよ…いきなり、あんなコト…オレ、分かんないもん…」
「じゃあ、分からせてあげるよ」
 鋼の口唇をふさぎ、躰の中心を撫で上げる。
「んぅ!…ふぁ…あ」
「今度は、いきなりじゃないよ…鋼が誘ったんだからね」
「とも、にぃ…」
 震える腕を伸ばして、俺の首に回す。
 こんな事が…これは現実なのか?
 鋼が…俺を?
 俺は、鋼を…抱いてもいいのか?
「…これ…昨日の?…痛い」
 俺の背中に鋼がつけた爪の跡。
「痛くないよ…もっと、俺に甘えてごらん」
「はぁ…っん、ん…な、に?」
「分かんないんだろ?俺が教えてあげる」
 何かを喋りかけた鋼の口唇を、もう一度ふさぐ。
 今度は深い口づけで…。
「これが、キス」
「ふ…ぁ…昨日と…全然、違う…」
「どっちが気持ちいい?」
「…こっち…巴兄…もっとぉ」
 鋼からの初めての口づけ…ぎこちなさが、余計に甘く感じさせる。
 俺を真似て、自分から舌を絡めてきた…俺もそれに応える。
「気持ちいい?」
「…うん…ねぇ…これも、キス?」
 鋼は俺自身を口に含んだ…昨晩、俺がさせた通りに…。
「!!…クス…違うよ…これはキスじゃないよ…でも気持ち良かっただろ?…いい?もっと気持ち良くしてほしかったら、俺以外を求めるな」
「う…ん…巴兄がいい…オレ、巴兄がいい…」
「イイ子だね…」
 一度、憶えてしまえば、快楽はクセになるだろ。
 今日から、時間をかけて鋼の躰に教え込んであげる。
 俺なしでは生きていけなくなるような、最高の刺激と快感を…。

・・・・・・・・・・

「今度の祝日?…別に空いてるけど?」
「じゃあ、またどっか行こうぜ」
「でも…こないだも遅くなって巴兄に怒られたんだよ」
「今度は遅くなんないように帰ればいいじゃん、な?」
「…うん…じゃあ、絶対だよ」

・・・・・・・・・・

「ただいま」
「巴兄、おかえりなさい!」
 子猫のような表情を見せながら、鋼は元気良く玄関に姿を見せた。
 明日は約束の祝日。
 都合の良い事に両親は今日から共に出張。
「鋼。夕食、何が食べたい?」
「…夕食より、巴兄と…あのね…」
 顔を赤らめて、俺の手を握る。
「何?」
 本当は、分かってる。
 あの日から、俺は鋼を抱いていない…たった四日なのに、もう何週間も経ってるようで…。
 それは、鋼も同じだよね?
 鋼はまだ自分で処理できないんだから、俺より辛いはずだ。
 でも、すぐには抱いてあげないよ。
 すべて、鋼次第だからね…。
「ね…巴兄…オレ」
 涙声になってるよ。
「お願い…して」
「…今日は、ダメ」
 本当は今すぐにでも、したいんだけどね…。
「いやぁ、どうして?」
「そのかわり、明日なら、めいっぱい抱きしめてあげるよ。一日中、キスしてあげる」
「明日…?でも、明日は…オレ…」
 碧君との約束があるんだろ?
 鋼、俺は愛情が友情に勝てるとは思わないけど、欲望は友情に勝てると思う。
 どうするかは、鋼が決めるんだ。
 だけど、友情を選んでしまうなら、俺はもう鋼を抱けない…。
 俺は…卑怯な男だから…。
「なにか用事があるんなら、無理にはいいよ。でも、今日はダメだからね」
「…」
 迷ってる。
 当然・・・か。
 鋼の中で碧君はまともな親友なんだから…初めて出来た友達なんだ。
 俺が、本当のことを言ってしまえば、きっと鋼は、どちらも選ばないだろう。
 初めての親友に裏切られ、裏切るなんて…鋼には耐えられないだろう。

 …俺の中で二人の自分がいる。
 一人は鋼は俺を選ぶと信じている。
 もう一人は、碧君を選んで欲しがってる。
 碧君が鋼の親友のままでいてくれるのなら、そう信じている俺がいる。

「どうする、鋼?」
「オレ…ヤな奴かなぁ…」
 俺の背中に腕を回し、抱きついてくる。
「オレ…巴兄と一緒にいたい…前よりずっと、一緒にいたいの」
「俺も、一緒にいたいけど…決めるのは、鋼だよ」
「…ねぇ…明日、本当にしてくれる?」
「ワケ分かんなくなるぐらい、気持ち良くしてあげる」
「…オレ…巴兄と、一緒にいる」
 そう言って、自分から口づけてきた。
 俺が教えたディープキス。

『え…?』
「本当にごめんね!今度、また別の日に誘ってよ、ね」
『…巴さんと過ごすの?』
「…うん。オレ、巴兄より大事なものなんてないんだ…」
『そ…っか…うん、分かった…もう、いいよ…じゃあな、鋼』
「じゃあ、またね…碧」
「碧君に電話?」
 これで…鋼には、親友と呼べる相手がいなくなった…。
 自分のせいだと分かってる。
 済まない気持ちはある。
 …だけど、それに勝るのは、自分の中の独占欲。
「…うん。でも、なんか…変な感じだったんだ…どうしたのかな?」
「鋼には、碧君が…必要?」
「…どういう意味?」
「俺は、鋼しかいらない…鋼以外必要ないよ」
 鋼は、俺の全てなんだ…。
「巴兄だから、碧との約束破ったんだよ…オレ…巴兄が大好きだよ。巴兄が喜ぶことなら何でもする…だから…」
「だから…何?」
 分かっていても、鋼の困った顔が見たくて、わざと分からないフリをする。
「ごめんなさい…オレ…本当に、も…我慢、出来ないよぉ…」
 頬を赤く染めて、自分の服のボタンをはずし始める。
「お願い…セックス…して」
「聞き分けのない子だな…して欲しいなら、どうしてほしいか言わないと…」
 鋼には、俺以外必要ない…必要とさせない。
「…ここ…さわって…」
 服を全部脱いで、小さな胸に触れる。
「さわるだけで、いいの」
 鋼の手の上から胸にふれ、乳首をいたぶるように爪で弾く。
「あ…んぁ…や、だぁ…違う、もっと…強く、噛んでぇ…」
 瞳を閉じて躰をねじらせる。
 その動作に自制していた感情の歯止めが壊れた。
「しょうがないなぁ…セックス、してあげる」
 鋼を抱き上げて、テーブルの上に寝かせ、口唇を重ねる。
「…ひぁ…あぁ」
 そのまま、躰の線に沿って、舌を這わす。
「ココ、こんなに濡れてる…キスだけで、こんなにしちゃったの?」
 小さく勃ち上がって、ヒクついてる躰を無視して、太ももに舌を動かす。
「…は、やく…とも…えに」
「早く…何?」
 鋼の足を上げさせて、その最奥を舌で濡らす。
「ひあっ!あ…いや…早…く…いれて…」
「入れてじゃないだろ。鋼がしたがってるんだから、自分でいれてごらん」
「え…オ、レ…が?」
「…そう」
 俺は椅子に座って、鋼に手を差し出す。
「何するか、分かるよね」
「…うん」
 小さく頷いて、鋼は俺の両足の間に顔をうずめる。
「っは、う…と、もえにぃ」
「もっと、奥までくわえられるだろ?ちゃんと、舌も使って」
 鋼の頭に手を置く。
 鋼自身の限界も近いらしく、瞳には涙があふれている。
「ん…ふぁ…ぅ」
「…そぅ…上手だよ…っ!」
 鋼の躰を知り尽くしたい…何もかも…全て。
「んぁ…!!っぐ、ん」
 咳き込む鋼の喉元をつかむ。
「こぼしたらダメだろ。いい…全部、飲むんだ」
 これから、俺の色に染め尽くしてやる…。
「ん…ぅあ、巴兄…」
 鋼の涙を拭うように瞳にキスをする。
 少しだけ塩辛い味のキス。
「…鋼、おいで」
 

「う…あ、あぁ…ん」
 俺の上に少しづつ躰を落としてくる。
「そぅ…ゆっくりでいいよ」
 鋼の腰を持って、なるべく負担を軽くしてやる。
 俺自身、ゆっくりと締め付けてくる感覚に流されないよう、タイミングをつかみながら…。
「っあ…あん、ぅあ…は、あぁ」
 呼吸を乱しながら俺の首に抱きついて、鋼の躰は俺を全部受け入れた。
「…よく…出来た、ね」
 一度、全てが入ってしまえば、後は簡単なことだろう。
 限りない欲望に従って躰を動かすだけでいい…。
「あ!巴にっ!いや…そんなのだめぇ」
 鋼の両膝を抱えるようにして腕を通し、足を開かせて、完全に俺の上に乗せる。
 両手を太ももの付根に伸ばし鋼の躰を支える。
「は…ぁ、巴…兄の…奥、まで…きてる」
「…分かるの?じゃあ…これは?」
 その体勢のまま、力任せに引き寄せる。
「ひっ!いっ、あぁ、やぁ…なに…わかんなっ、あぁ、っあ」
 今度は鋼の躰を少し持ち上げる。
「鋼を…全部、感じさせて…」
 そのまま、自分の欲望を鋼にぶつける。
「あぅ、ん…やあぁ、オレ…へんに…なっ…っちゃう、よぉ…」
 躰を揺らされて、途切れ途切れの鋼の言葉が耳に届く。
 強く抱きしめられ、鋼の涙が肌を伝わって俺にも分かる。
「…俺、も…おかしく、なりそうだ…」
 躰の中心から熱が広がっていく…。
 

「鋼。起きられる?」
「…躰…動かないよ」
 …無理もないな。
 俺だって驚いてるんだ。
 今までの時間を埋めるように際限なく鋼を抱いた。
 鋼を抱いて眠る。
 起きて、鋼を抱く。
 その繰り返し…気が付けば、久しぶりの休日は怠惰なものになっていた。
「明日、ガッコ行けるかなぁ?」
「いいよ。行かなくたって…」
 今まで、どうやってこの感情を抑えていたのかなんて分からなくなるぐらい、鋼が愛しい。
 鋼だけが、欲しい…。

 結局、次の日、俺達は学校を休んだ。

・・・・・・・・・・・・

「鋼?どうしたんだ」
 学校から帰ってきた俺の胸に飛び込んできた鋼の瞳は真っ赤に腫れていた。
「…あ…おいが…いなくなった…」
 あまりにも突然なことで一瞬、理解出来なかった。
「いなくなったって、どういうコト?」
「…て…んこう…しちゃ…った」
 転校…それが碧君の焦った訳か…なるほどね。
「オレ…そんなっ…しらな…っい…」
 本当に、幸せな時間はどうしてこんなに早く過ぎてしまうのだろう…。
「大丈夫。俺はずっと鋼の傍にいるから」
「…と?…ずっと…いてくれる…やだよ…いなくなっちゃ…だめ…」
 俺の腕の中にすっぽりと入ってしまう小さな躰を震わせながら、鋼は俺の躰を強く抱きしめる。
「うん…鋼が望む限り、傍にいるよ」

 この時からかもしれない、鋼が人見知りをしなくなったのは…誰にでも懐くように、上手に甘えられるようになった。
 自分を裏切らせないように、無意識に自分が必要だと思わせられるようになった…。
 だけど、決して自分から心を開こうとはしなくなった。
 

 それから二年後。
 俺は受験を控えていた。
「巴兄!イタリア行っちゃうって…本当?」
 顔色を変えて、俺の顔を覗き込む鋼。
「嫌だよ…イタリアなんて…そんな…外国じゃなくたって勉強できるんでしょう?」
「海外の有名な建築物に興味があるんだよ」
「でも…」
 俺だって、鋼と離れたくない。
「鋼は…賛成してくれてると思ってたんだけどな」
 でも、俺の夢なんだ…。
「…」
 鋼は何も言わず、俺の口唇にふれてきた。
「俺がイタリアに行くと、どうして嫌なの?エッチできなくなるから?」
「違っ…それも…あるけど、巴兄と離れるの嫌だ…オレは巴兄の傍にいたい。巴兄だって、オレと一緒にいたいって言ったのに…オレを一人に…しないで」
 つくづく…俺も甘いよな…。
「東京と京都…それぐらいなら我慢できる?」
「え…」
「京都に建築学に力を入れてるトコがあるんだ。俺はどこにも行かない…ずっと、鋼の傍にいるよ」
「…うん!」
 イタリアの大学には、結構期待してたんだけど…こんな笑顔見せられたら、しょうがないかな。
「…で、鋼。俺の人生変えといてタダってのはないよな?」
「巴…兄?」
「イイコにしてれば、もっと愛してあげる」
 鋼のピンク色の小さな乳首を舌で転がす。
「!はっ…んや…」
「…さっきのが残ってる…これなら、最初からでも平気だろ」
「うん…!!っあ…ぁあ…っく、ん」
 ゆっくりと、鋼の躰に自分の熱を打ち込んでいく。
「…動くよ」
「は、あ…あっあ…ともっ、い…い…もっと…巴…」
 無意識に親指の爪を噛む仕草、自分で気付いてる?
 最高に、いい表情だよ。
「もっと、良くして欲しい?」
 鋼の腰に手を添え、躰を起こさせる。
 鋼を俺の躰の上に乗せたまま、ついばむようなキスを繰り返す。
「!?…え…あ…」
 鋼の顔が赤く染まっていく。
「やだ、これ…」
 俺の胸に顔をうずめる鋼を見ていると、思わず笑いがこぼれる。
「どうして?嫌?」
 …理由なんて分かってるけど。
「…だって、これ…だと、全部見えちゃぅ…」
 鋼の声はどんどん小声になっていき、最後の方は聞き取れなかった。
「もっと俺に見せてよ。鋼の綺麗な躰、見ないなんてもったいなさすぎだからね」
 鋼の躰を強く引き寄せる。
「動いてごらん…気持ち良くなるから…」
「いやっ…あぁ、あっ、だめ…ぇ」
 俺の肩に強く指をくいこませる。
 俺は鋼の呼吸に合わせて、ゆっくりと躰を動かす。
「あ、あぁ…んぁ、っい、ぃ」
 堅く閉じた瞳から数滴の涙がこぼれ落ちる。
 真珠のような…淡い雫。
「鋼…瞳を開けて…俺を、見て」
「とも、え…ふぁ…いっ、く…だめ、もっ…う!あ、ぁあ!!」
 鋼はグッタリとして、俺に躰を預ける。
「…気持ち良かった?」
「…う…ん。でも…巴兄は…まだだよ?」
 潤んだ瞳をさらに潤ませて、俺を見つめる。
「オレ…してあげる」
 鋼がしてくれる時は、もっと俺を求めてる証拠。
「鋼…そのままでいいから腰上げて」
「んぅ…ん!」
 鋼にも軽い刺激を与える。
「ここ、気持ちいいの?もっと、指、増やしてみようか?」
 俺のをくわえたまま、小さくうなずく鋼。
「ぅあ…っ、ん…」
「さっきいったばかりだろ?もうこんなにして…そんなに感じるの?」
 愛撫していた指をさらに深くもぐらせる。
「はっ、んぅ…そこっ!…んぁ…もっと、して」
「じゃあ、自分のさわってみて」
「え…?」
「自分でいってみせて」
「オレ…の?」
 まだ、自分でしたことないよね。
 だから、俺に見せて。
 鋼がどんな風に鳴くか、見てみたい。
「そう、こっちは俺がやってあげるから…鋼」
 さっきまで弄んでいた指を抜き、双方の奥めいた秘所に舌を這わす。
「ひぁ、っ…ん」
「早く…鋼」
 俺がそう言うと、鋼はゆっくりと腕を伸ばす。
「そう…いつも、俺がしてあげるみたいにやってごらん」
「ん…」
 瞳を閉じて、ゆっくりと指を上下に動かす。
 必死で声を殺している。
「ダメだよ。ちゃんと、瞳開けて、もっと、声を聞かせて」
 鋼の口唇に指をあてて、口を開かせる。
「んあっ…あ、ぁあ、巴…とも…えに」
 機械的だった動作に人間的な動きが混じってきた。
 自分の感じる場所を見つけたのか、集中的に責め始めている。
「そこがいいの?」
「ん、ぅん…いぃ…いいよぉ…と、もえにぃ、もう…もっ」
「ごめんね。もういってもいいよ」
 鋼を促すように、俺の手で愛撫を加える。
「い…やぁ!…オレ、ともっ…ん、巴兄…に、いかされたい…ともえ、いかせてぇ…」
 胸の奥が熱くなる。
 躰中の血が沸騰する。
 俺を解放する…特別な呪文。
「いかせてあげる。だから少し…我慢して…」
 何度も慣らした小さな蕾に俺の熱を挿し入れる。
「いっ…いたっ、やぁ…いたい…」
「鋼…ごめん…でも、もう…止まらないよ」
「う…ん…平気…だから…きて」
 俺の耳元で小さくささやく。
「んあぁっ!あ、っう、い…くっ」
「いかされたいんだろ…俺に」
「っん、はぁっ…い…んぁっ、だめ…も」
「いいよ…一緒に…ほら」
「んあっ…い、っく…と、もえにぃ…すきっ!!」

・・・・・・・・・・

「巴兄。オレ…待っててもいいんだよね?」
 京都に行く前夜、いつものように鋼は俺のベッドに潜り込んできた。
「…鋼こそ、俺がいないからって他に相手見つけるなよ」
「!?そんなことしないもんっ!巴兄だって、浮気しちゃダメだよ」
「しないよ。俺には鋼だけだから…」

 俺は、大人ぶった子供…独占欲と我侭のかたまりなんだよ。
 ずっと欲しかったものが手に入ったんだ。
 そう簡単に手放したりなんかするワケないだろう。
 本当なら一秒だって離れていたくない。
 でも、今、愕然としたままでは鋼を守れない。
 だから、これから、確信を持って鋼を守るために…少しだけ距離を作る。
 俺が大人になるための時間を置くんだ。
 

 片端は高校卒業と同時に写真の方に力を注ぎ、海外を点々としている。
 俺の方は、京都の大学に入学し、これからの自分を考えた。
 鋼と二人だけで生きていく…そう決めて。
 俺は、鋼以外に好きな奴なんて出来そうにない。
 俺は鋼と一緒に生きていく。
 これは俺の初恋でもあって、最後の恋でもあるんだ。
 …自分の一生を懸けて愛した人が鋼で良かった。
 そう言えるような俺になるんだ。

 自分のために…そして、鋼のために。
 
 
 

<END>

巴さんと鋼クンの番外編です。
さすが、深結のキャラクター1の18禁兄弟・・・。
つーか、このシリーズ、巴さんの育成シュミレーションになってません?

鋼くんは、相変わらずバカですね〜(笑)
単純だから、ここまで快楽に従順なんですね(爆)
つーか、こんな小学生、いやだ・・・(泣)
こんな高校生もちょっといやだ・・・(涙)

巴さんと片端さんの腐れ縁は高校からです。
二人で歩いてるとかなり目立つであろうコンビ。
生徒会長と問題児のコンビです。
じつわ、巴さんはこの時点で多久人と出会ってたりします。
だから、多久人が巴さんの存在を知ってたんですね〜。
でも、巴さんは興味ないので再び会うまで忘れてた(笑)
そして、今回登場した一条碧。
彼は成長してまた出てくる予定です・・・・多分。

そして、鋼クン、嘘ついちゃいけません。
アナタ、浮気しまくりです(苦笑)

(C) 20000727 志月深結

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