明日で春休みも終わり。
たった2週間の休みを、俺はずっと克也と過ごした。
毎日、克也が会社から帰ってきてから夜遅くまで…時々、泊まってるけど。
今日は春休み最終日の日曜日、俺は朝から克也の家に上がり込んでいた。
「あ…痛っ…」
「拓巳…大丈夫…痛い?」
心配そうな顔で克也が俺を見つめる。
「う…ん。な…本当に…しなきゃダメ?」
俺 、止めたいよ…こんなに…胸が苦しくなるなんて…。
「拓巳が言いだしたんだろ…今更、止めようったってダメに決まってんじゃん」
そう…確かに、言い出したのは俺だけど…。
だって、こんなに痛いなんて…。
「でも…俺、やっぱり…恐いよ…」
…すごい緊張する。
「俺だって、本当は拓巳を傷つけたくないんだ…でも、分かるだろ?」
そんな顔するなよ…そんなの…ズルイ…。
「克也…」
「こればっかりは…。だから、な。拓巳…」
「…分かったよ!行けばいいんだろ、行けばっ!!」
「そ。素直に行ってきなさい。歯医者さん!予約までしたんだからな…痛むんだろ?それに、明日から学校なんだから、行けるうちに行っとかないと」
「…うん」
俺、津森拓巳。
現役高校2年生、もうすぐ3年。
それで、さっきまで俺と話してたのが、片山克也。
27才のくせに課長のポストに落ち着いてる、スッゴイやり手(らしい)の独身社会人。
俺達は同じマンションのお隣り同士で恋人同士。
出会いは…よく覚えてないんだけど、多分、克也から声かけられてお茶したのが最初…なはず?
…で、そのまま、現状に至ってるのかなぁ?
でも、今はちゃんと克也の事、好きだから付き合ってる。
「うぁ〜…痛ぇ、やっぱ、止めとけばよかった」
でも、もう終ったし、いっか。
早く、克也のトコ帰んなくちゃ。
「…津森」
「何?」
って…なんで道端で名前呼ばれるんだ?
それに、返事してる俺も俺だよ。
ここは学校じゃないっての。
「あ…天堂。久しぶり」
同じクラスで出席番号が俺の後ろの天堂豊。
空手部の主将で、見た目も体格も良いんだよな。
俺の身長コンプレックスをくすぐりまくる奴だよ。
女の子にももてるのに、彼女はいないみたい。
でも、好きな人はいるって、噂で聞いた。
「何?お前ん家、この辺?」
「あぁ…お前も、この辺だよな」
「うん。よく知ってるじゃん」
学校ではあんまり話さなかったのに…本当、よく知ってる。
「あの…」
「何?」
天堂は俺と瞳を合わせるなり、顔を赤くして口ごもる。
これは…なんか、まずいなぁ…こうゆうのって、絶対アレなんだよな…。
「拓巳!」
聞き慣れた声。
「…克也」
ホッとした…。
このまま、ここにいたら、多分、マズってたから…。
「じゃあ、天堂…またな」
何か物言いたげな表情が印象に残った。
やっぱり、一人で歯医者なんかに行かせない方が良かったかな?
拓巳のことだから、予約しても行かないかもしれないもんな…。
そろそろ、予約時間から1時間…迎えにでも行きますか。
「確か…こっちの方だったよな…あ!」
見慣れた姿…と、もう一人は…誰だ?
綾瀬君…じゃないなぁ…拓巳の友達にあんな男前な奴いなかったはず…だよなぁ?
「拓巳!」
「…克也」
俺を見て、安心した表情を見せる。
どうしたんだ?何かされたのかっ!?
叫びたい衝動を必死で抑える。
「じゃあ、天堂…またな」
…天堂っていうのか。
拓巳が俺の隣りに来たのを確認して、天堂と瞳を合わす…!?
って、おい…俺達は今日が初対面だよな…なんで、俺が睨まれなきゃいけないんだ。
まぁ、思い付く理由は一つしかないんだけどな。
「ちゃんと歯医者、行った?」
テレビに夢中になっている拓巳を後ろから抱きしめるようにして座る。
「行ったさ!すっげ、痛かったんだから!!」
「ふぅ…ん…アレとどっちが痛い?」
アイツの事を話してくれない拓巳を、少しいじめたくなった。
「!!!」
一瞬、驚いた顔をした後、拓巳は俺から離れようとする。
でも、逃がさない。
「分かんないなら、試してみないと…」
拓巳のニットの裾をめくっておへそのくぼみに爪をたてる。
「こら…何すんだよっ!」
「拓巳だって、好きだろ」
「ばか、やめっ…ん」
おへそのラインからゆっくりと下へ指を動かす。
「本当に、止めろって…克也!」
「止めたら拓巳、逃げるだろ」
「…逃げないから…離せよ」
無意識に動きが止まった。
俺の瞳を真直ぐに見つめる瞳。
気の強い性格とは裏腹に優しい瞳。
「そーゆー瞳するから、素直に言う事きいちゃうんだよな」
「この瞳が好きなんだろ」
「好き。でも、こっちも好きだよ」
拓巳の桜色の口唇を確かめるように小鳥キスをする。
その後、本気の口づけを与える。
「拓巳の全部が好きだ…髪も、瞳も、口唇も、胸も、おへそも…」
言葉に合わせて指をずらしていく。
「…ここも、ね」
「!」
ギュッと瞳を閉じて、顔を伏せる。
その行動が俺の悪戯心をくすぐるんだよね。
「服の上からでも感じるんだ」
「やだっ…かつ、や」
躰を縮めて、俺から逃げようとする拓巳の足首を掴んで躰ごと俺の足の上に乗せる。
「逃げないって、言ったじゃないか」
拓巳の背中を力強く抱きしめる。
「克也…何か、怒ってる?」
俺が怒ってる事に気付いたんなら、その理由も分ってくれよ。
「…さっきの男…誰だよ」
「!!そんな事で怒ってたワケ!?」
拓巳の呆れた顔に、余計腹が立ってきた。
「そんな事?俺にとっては重大なんだぞ!拓巳とは会えない時間の方が多いから、その間にお前が誰と会って何してるとか、色々、色々考えてて…。拓巳だって、あんまり会えない俺より、いつも傍にいてくれる誰かの方がいいんじゃないか…とか」
しまった。
そう思った時にはもう遅かった。
拓巳から表情が消えた。
こーゆー時は拓巳が本気で怒っている証拠なんだ。
「俺、そんなに信用ない?俺は克也と付き合ってんだぞ。克也が好きなんだ。なのに、克也は俺がお前以外の誰かとエッチしちゃうような奴に見えちゃうんだ」
「そこまで言ってない」
「同じだろ!俺はお前のこと信じてた。なかなか会えないけど、その間、俺のこと考えてくれてると思ってた…。でも、そう思ってたのは、俺だけだったんだ…」
「…俺はお前の事考えてるよ。考えてるからそう思ったんだろ!」
「だったら…だったら、俺の事、もっと…よく分かれよ!!」
拓巳の躰を抱きしめた俺の手に拓巳は自分の手を重ねる。
「俺は、克也としか…こんな事、しない」
俺の指を口唇まで動かす。
「好き」
俺の指を味わうように口に含む。
「ん…ん」
「…拓巳…もっと、舐めて」
指に絡みつく舌の感触を楽しむように、数を増やす。
「うあ…ん」
「拓巳…他の場所も、舐めてよ」
拓巳は何も言わず、俺のズボンのファスナーを下げる。
「そう…よく濡らさないと、つらいのは拓巳だからね」
「ん…な、俺のも…して」
そう言って拓巳はハーフパンツ越しに自身に触れる。
「いいよ。足、こっちに向けて」
拓巳の着ていたハーフパンツを脱がし、敏感になった先端を軽く噛む。
「やっ…ちゃんと、しろよ」
「『舐めて下さい』…言ってごらん」
「やだよ…そんな、あっ」
舌先を触れるか触れないかギリギリの距離まで持っていく。
「『舐めて下さい』は?」
「っ…あ…舐めて…な…めて、くだ…さい」
「そう…よく、言えたね」
そして、言葉通りの愛撫を加える。
「ふ、あ…かつや」
口で拓巳自身を弄びながら、指先で奥への強い刺激を与える。
「ひゃ、あ…あぁ、だめ…そこ、やっ」
「嘘ばっかり…中はこんなに熱いのに…もう3本ぐらい、入るんじゃない?」
「いっ…や、ちがっ…う」
「何が違う?」
指を更に奥まで入れる。
絡みついてくる感触が何を欲しがっているか、よく分かる。
「か…っや、の…ばか」
「バカはないでしょ。俺だって拓巳を欲しがってんだから…だから、言ってよ」
指を抜いて、そこに舌を沿わし、軽く刺激し続ける。
「や、も…ちょうだい…かつやの、ほしい…おれのなかに、いれ…て」
「クス…仰せのままに、王子様」
拓巳の背中にキスをして、後ろから両足の太ももを割って躰ごと引き寄せる。
「良い眺めだな」
肩越しに拓巳の躰を覗き込む。
「ばっ!ふざけんなっ!」
「嘘じゃない。拓巳の躰は本当に綺麗だから…時々、俺なんかが触れても良いのか分からなくなる」
「…克也って…本当にバカ?何回言わせりゃいいんだよ!俺はお前と付き合ってんの!!お前は俺のモノだし、俺はお前のモノなの。自分のモノなんだから、どんな事したっていいじゃん」
…拓巳が何で俺に我侭なのか分かった。
でも、こんな考え方って…普通はないだろ。
「克也だって、ワガママ言っていいんだぞ?俺、克也の言う事なら何でもきいてやる!あ、でも、女になれとかテストで1番取れとかは無理だからな」
そんな事言わない。
俺はもう我侭言ってるから。
「拓巳が俺に我侭言ってくれるのが、俺の我侭」
「???そんなんでいいの???」
「それがいいんだよ」
拓巳に好きでいてもらいたい。
拓巳のモノらしく、我侭いってもらわないと。
「とりあえず、続きをする事から始めますか」
「っあ、あぁ、かつやぁ…」
いつからだっけ…こんな声が出るようになったの。
最初はただ痛いだけの行為だったのに…あ、そうだ、俺があんまり嫌がったから克也の奴、しばらく我慢するって言い出したんだ。
その分、おかずにされてたけど…。
でも、なぁんか、日に日に俺を見る目が変わってきちゃって…もう、俺ってば犯られちゃう寸前状態?
これは、俺の方が折れなきゃダメみたいなカンジでさ…。
克也にはすごい無理させちゃったから、俺も我慢しなきゃとか思ってたのに…すごい、優しくしてくれたんだ。
克也が俺のこと大切にしてくれてるんだってよく分かった。
何度も何度も名前を呼んでくれた。
それが、嬉しくて…今更ながら、すごい感じちゃったんだよなぁ。
もう、後は済し崩しだったけど…。
「拓巳…拓巳、平気?」
「…ん、もっと…いかせて…なに、してもいいから…きもちよく、して」
「嬉しい事…言ってくれるね。拓巳…もう少し、力抜いてみて」
「や…だ、できない」
力抜けって…これでも精一杯抜いてるんだよ!これ以上は無理だよ。
「大丈夫…俺、動かないから…ゆっくり息して」
「う…あ」
途切れ途切れの呼吸を、ゆっくり元に戻す。
「かつ、や…?どうし!!やだっ、うごかないって…ひっ!」
呼吸が戻ったと思った瞬間、呼吸が止まった。
躰を揺らされて、思いもしない程深くまで克也の侵入を許してしまった。
「そ、だから俺…動いてないもん」
「ばっ!!あっ、やあぁ」
バカ克也。
そう思っても声にならない。
口からこぼれる音は言葉じゃなくなってた。
「も…やだ…」
躰の中が熱くて、自分だけの刺激じゃ物足りない。
「かつや…も…うごいて…」
「俺は、動いちゃ…ダメなんでしょ」
「いい、から…う、ごいて…は…やく…」
俺の中を、克也でいっぱいにして…。
「たまには…拓巳のだけで、いってみたい気もするけど…やっぱり、マグロは性に合わないみたいだな、俺」
ウソばっか…自分だって限界近いくせに…。
「っあ!ぅあ…ん、あ、い…く」
も、ダメ…何も考えられない…躰が、熱い。
「かつや…いっしょ…いっしょに…」
克也の指に自分の指を絡ませる。
躰中…絡ませた指先にまで力が入る。
「…拓巳…好きだよ…」
「おれ…おれも、すき…かつ、やっ!」
「あのな…さっきの奴、同じクラスの天堂っていうんだけど…偶然あそこで会ったから、少し話してただけだよ」
ちょっと、気になるけど、別にコクられたワケでもないし、俺の勘違いだと天堂に悪いもんな。
「本当にそれだけ?」
「それだけって、他に何があるんだよ?」
「…告白…とかされてない?」
うわ…克也って、そーゆーの見抜くの、得意だよな。
「…まだ、されてないよ」
「やっぱり、拓巳だって気付いてるんじゃないか」
そりゃ、あんだけ赤くなられたら、普通はそう思うよな。
アイツ、別に赤面症ってワケじゃないし…。
「克也も、そう思う?」
「思う。俺、睨まれたんだからな」
「あぅ〜…どうしよ。これから1年アイツとどう接すりゃいいんだよ」
2,3年はクラス繰り上げだからなぁ…。
しかも、出席番号前後だよ。も、最悪。
「ま、相手の出方を待つしかないね」
「…?ずいぶん、さっきまでと態度が違くない?」
克也の笑顔が何だか恐いけど…。
「だって、俺、愛されちゃってるって分かったから。拓巳、俺の名前でいくのって、初めてだったろ」
「!!」
コイツ…もぅ、バカすぎて、怒る気力もなくなってきた。
「…で、どっちが痛かった?」
…そういえば、そんなくだらない事から始まったんだっけ。
「やっぱり、歯医者の方が痛いや」
「!!歯医者、そんなに痛かったのか?」
「…だって、こっち、痛いって言うより、気持ちいいもん」
俺の隣りで横になっている克也にキスをする。
ま、たまには、素直になってもいいかな、なんて、思っちゃったりしたワケさ。
「そっか…拓巳、気持ち良い事なら好きだよな。と、ゆーことなので、もう1回、いただきます!」
「わっ!ばか!!やめろっ!!!さっき、3回もしただろ!?明日、ガッコ行けなくなる!!」
「ほら、こーゆーのは、体力ある時にしとかないと、ね」
「ね、じゃねーよ!お前、体力なくてもするじゃないか!!バカ克也〜!!!」
もー絶対、素直になんかなってやんないからな。絶対だ!
今回はバカップル二人でイチャついてもらいました。
流生の出番はまた後日(笑)
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