大人のイイワケ 子供のワガママ
 

Q:自分が幸せだと思う時って、どんな時?
 

「テストも終ったし、後は冬休みを待つだけやな!あ、今年のクリスマス、どうする?カラオケでも行くか?」
「サンセー!」
 クリスマスなんて、こなければいいのに…。
「あ!俺、パスね」
「ハイハイ。ええなぁ、彼女持ちは。あとは…拓もダメやったな」
「あ、う…」

 ・・・・・「克也なんて大嫌いだ!!」

「行くよ、俺!みんなで遊ぼうぜ。オールでカラオケだろ」
「…よっしゃ、ナンパに走ろうやないか、な、拓」
「ちょっとっ!!私達がいるのにナンパなんてすることないでしょ!みんなでオケるのよ!ね、拓?」
「…うん」
 もう、関係ない。
 あんな奴、こっちから捨ててやる!

・・・・・・

「もうすぐクリスマスだな」
 俺と克也で過ごす3回目のクリスマス。
「あのな…それなんだけど…」
「今年はどうする?」
 その日は、克也を独占できる。
「悪い!その日、仕事なんだ」
「え…?」
 どうして?
 …だって、今年のクリスマスはずっと一緒に過ごすって決めたはずだろ…。
 約束だったのに…。
「本当にゴメン!抜けられない会議なんだ。でも終ったらすぐに…」
「いいよ。会議、出ろよ。克也がいなきゃダメなんだろ?出ればいいじゃん!」
 分かってる。
 克也は会社で期待されてるんだから…分かってるけど…やっぱり。
「拓巳…」
「いいってば!勝手に会議でもなんでもすればっ!?俺だって、他の奴と一緒に過ごすからっ!!」
「拓巳っ!」

―バシッ―

 な…に?
 …初めて…克也が俺を叩くなんて…どうして?
 怒りたいのは俺なのに!!
「あ…拓」
「…もういい!克也なんて大嫌いだ!!」
 俺だって…克也がいないとダメなのに…。
 どうして分かってくれないんだよ?

・・・・・・・・

「じゃあ、また明日な!」
「あぁ…」
 なんだか家に帰るのがつらい…。
 克也とは同じマンションのうえ、お隣り同士。
 嫌でも毎日顔を合わすんだ。
 今朝だって、克也が会社に行ってから学校に行ったんだ…なんだって、俺がこんな苦労しなきゃいけないんだよ。
 …なんて考えながら歩いてたら、もう家に着いた。
 とりあえず、克也がいない事を確認して自分の家まで猛ダッシュ。
「ただいま!」
「お帰りなさい。さっき片山さんがいらしたわよ。大事な話があるって言ってたけど…」
「…克也が?」
 もう、関係ないんだから…。
 俺は自分の部屋にこもって、ベッドに潜り込む。
 …そのまま、何も考えず、ゆっくり眠れば、次の日には元に戻っているような気がして…。

「じゃあ、母さん。今日は多分、流生の家に泊まるから…行ってきます!」
 時間って容赦なく過ぎるよな…。
 結局、3日間、克也とは一言も話さないまま今日は24日、クリスマスイブ。
 あんなに楽しみだったのに…全然、つまんないじゃん…。

「どした、拓?さっきから全然、歌ってないやん?」
 楽しくないのに、歌なんか歌えねぇよ。
「…あのなぁ、拓。子供はなぁ、サンタクロースにプレゼント貰うためにイイ子ちゃんにしてるやろ。でもな、大事な子供にプレゼントをくれんサンタには、悪い子にならなあかんと思うねん」
「流…?」
 何言ってんだよ…流生の奴。
「つまりや、直接、プレゼント奪いに行ったってかまわんっちゅーことや」
 それって…もしかして…。
「!!…悪い…やっぱ、俺、帰る」
「がんばりや!拓」
「サンキュ、流」

「22時…まだ、会社にいるのかな?」
 携帯に電話しても留守電になってる…。
 まだ、会議中なのか?
「かつ…やぁ」
 逢いたい…克也に逢いたい。
 たった、3日、逢わなかっただけなのに、もう、3年も逢ってないみたいだ…。
 そう思うと、足が勝手に動き出していた。克也のいる場所に…。

「あの、営業企画課の片山克也、どこにいるか分かります?」
「…申し訳ございません…関係者以外は…」
 思った通りの答え。
 そうだろうなぁ、こんな私服でいきなり乗り込んできても、相手にしてくれないよ、普通…。
「そうですか…分かりました」
「すみませ…」
「強行突破します!!」
「!!え…ちょっとっ!困ります!!」
 そんなの知るかっ!俺だって困ってるんだ!!
「克也!!いるんだろ!?出てこいよ、この俺がわざわざ来てやったんだ!!」
 警備員から逃げつつ、階段を駈け上がりながら、大声で叫ぶ。
 早く、俺を見つけろよ。

「…?なんだ、外が騒がしいな」
「イブだから、みんなうかれてんだろ…」
 それは、会議が一段落ついて、少し休憩に入った時だった。
「片山さんは、待ってる人いないんですか?」
 今の俺に、そんな酷な事を聞かないでくれよ…。
「いるよ…待ってるかどうかは分からないけどね」
 拓巳…怒ってるだろうな。
 いくら弾みとはいえ叩いちゃったし…痛かったよなぁ。
 あの日から、露骨に無視されまくってるしなぁ…。
 あぁ〜このまま無視され続けられるのか?
 …それどころか、他の奴に拓巳を…!!
 そういえば、今日、誰と過ごしてるんだ!?
 …マジで、俺、捨てられるんじゃ…オイオイオイ〜。
「…っや…克也!どこにいんだよっ!!早く出てこいよ!」
「!!!」
 い…まの声…拓巳!?
 そう思うと、いてもたってもいられなかった。
 席を立ち、会議室のドアを開ける。
 廊下に響く声が、もう一度、耳に届いた。
「もう、離せよ!」
「拓巳…」
 これは…夢か?

「克也!早く、助けろよ!!」
 やっと、見つけた。
「…あ、あぁ」
 克也に警備員の人を説得してもらって、やっと俺は自由になった。
「拓巳…どうして?」
 克也に手を引かれて、誰もいないデスクルームに連れて行かれた。
「…お前のせいだからな…」
 窓から見えるクリスマスカラーのイルミネーションが瞳に痛い。
「え…?」
「みんなと楽しくやってたのに…なんか…つまんないんだよ!お前が、いないから…どうしてくれんだよ!」
「…ごめん…」
 ギュッて抱きしめられた躰が暖かい。
「…責任とれよ」
 俺も克也の背中を抱き返す。
「責任とらせていただきます」

 結局、克也の会議が終るまで、俺は待ちぼうけ。
 でも、その後、サンタクロースから最高のプレゼントをもらった…エヘヘ 

・・・・・・Merry Christmas!

Q:自分が幸せだと思う時って、どんな時?

A:大好きな人からプレゼントをもらう時・・・かな。
 
 

<END>

またまたどこからか発掘してきました。
3年前の作品です。
でも、じつわお気に入りで、シリーズ化してます(笑)

この大人子供シリーズ、色々とリンクしてる小説があるんですよ。
まだ、UPしてませんけど・・・。
それを探すのも一つの楽しみ方です(笑)

深結的のお気に入りキャラは綾瀬流生です。
もう一人いるんですが、今回は出てません(笑)
じつわ、関西弁のキャラが書きたくて作った小説なんです、これ(笑)
当然、彼の話もあります。
もう一人とは、彼の恋のお相手です。
ちなみに彼には双子の妹の流香ちゃんってのがいます。

(C) 20000805 志月深結

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