「タケル。もうすぐ誕生日だね。何が欲しい?」
言われた瞬間、ボクは動きが止まる。
思い出すのは去年の誕生日。
「………いらない」
「えぇ?なんで!?」
「…去年の誕生日…忘れたの?」
パソコンから目を離して考える仕草。
こーゆーのも様になるなぁとか思いながら、はっと、ずれた思考を元に戻す。
去年の誕生日…。
プレゼントは前から欲しいって思ってた風景写真のROM。
それから二人で食事をして………楽しい誕生日になってたはずなのにね。
「ボクが言ってるのは、その空白時間」
賢の顔色が一気に青ざめる。
「いきなり部屋に連れこんでベッドに押し倒すような危険人物からはプレゼントなんて貰いたくない」
しかも、一晩中…信じらんないよ。
「で、でも、今年はちゃんとディナーの予約も…」
でぃ〜なぁ〜?
まさか、それって…。
「どこのホテルで?」
「そりゃクィーンズホテルのスウィートを…あ…」
賢は言いかけた言葉を慌てて断ち切る。
こうゆうとこ、まだ甘いよね。
「ふぅ〜ん、へぇ〜…部屋までリザーブしてるんだ」
しかも、スウィートね…。
充分、その気なワケなんだ。
「タ…ケル…(汗)」
「下心見え見え」
…賢の気持ち、わかんないわけじゃないけどさ…。
ボクは、一緒にいられるだけでいいのに。
「も〜今年の誕生日はお兄ちゃんと過ごす!」
そんな気、全然ないけど…賢にはイイ薬でしょ。
「なっ、タケル!?」
立て続けに口からこぼれた言葉にボクは微妙に反応する。
「アイツはある意味、僕より危険人物だぞ!」
「…そういうのは、思ってても口にしないでくれる?」
仮にも、ボクのお兄ちゃんなんだからね。
「去年…賢のせいで次の日の学校休んじゃったんだからね!」
「……アハハ……」
…ったく、笑って誤魔化すなんて…最近、大輔クンに似てきてない?
「ボクはやめてって言ったのに……賢のバカ!」
ホントに何度もやめてって言ったのに、賢ってば何回もさぁ…。
ボクのこと好きって…何度も言って…。
……うわ、どうしよ…思い出しちゃった。
「…でも、気持ち良かっただろ?」
「うん…!?!?!?って、ち〜が〜〜う〜〜〜!!!」
うわ、も〜何言わせるんだよ!
「タケルを抱くと…際限ないんだ」
……だめ。
そんなこと言わないでよ。
ボクが…そーゆーのに弱いの…知ってるくせに…。
「だから、半分はタケルのせいだよ…」
きっと、耳まで真っ赤になってるボク。
賢はそんなボクをギュって抱きしめる。
「タケルだって、僕を欲しがってるんだから」
あ〜…また、このペース?
…どうして、ボクって、こうかなぁ…。
「……ゲーム…」
………いつも…流されちゃうんだよねえ。
「え?」
「欲しいゲームがあるの…買ってくれるんな…」
「もちろん!」
ボクの言葉は最後まで言えなかった。
賢の嬉しそうな声に言い切られちゃったし…口唇もキスでふさがれちゃった。
結局さ…ボクも賢が好きなんだよね。
これが、流されちゃう原因。
…きっと来年の誕生日も…こうなんだろうなあ。
<END>
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