おかえり
 
 
 

 それは、まるで、くだらない映画の結末のような呆気無さ。

 けれど、それは、プレゼントを開ける瞬間のような高揚感。
 
 

 呼吸を 忘れる。
 
 

 鼓動が 速やる。
 
 

 視界が 開ける。
 
 

 其処に 在る姿。
 
 

「…………ア…ル」
 

 喉がカラカラに乾涸びたようだ。

 声が、上手く出せない。

 畏怖に震え、音にならない禁句のように。

 神聖に震え、音にならない言霊のように。
 

「………アル」
 

 錬成陣の中央に横たわる小さな身体がピクンと動く。
 

「……アル」
 

 ひどくゆっくりと、静かに。

 色素の薄い金色の瞳が。

 俺を捉えた。
 

「…アル…フォンス」
 

 駆け出した。

 必死だった。

 ただ、目の前の身体に触れたくて。

 また、俺の前から消えないように。

 今度こそ、逃がさないように。
 

「アルフォンス!!!」
 

 その身体を、力の限りで、抱き締めた。
 

「………に…さん」
 

 小さな、小さな身体。

 あの日、全てを持っていかれた日。

 あの時のままの身体。

 それでも、俺は取り戻した。
 
 
 

「おかえり」
 
 
 

 俺の全て。
 
 
 


まるで長編小説の序章のようだ…。
鋼サイトを作ろうと思ったキッカケになったお題です。
がんばって全クリ目指すぞ(笑)

20040205

モドル