「スコールばっかりずるい」
可愛い瞳を潤ませて、突然何を言い出すかと思えば・・・俺には何のことか全く分からないぞ?
「俺もチョコボに乗りたいっ!」
あぁ、そういうことか・・・そういえば、まだゼルはチョコボを捕まえたことがなかったな。
「そりゃ、捕まえられなきゃ乗れないだろ」
言った後に後悔が津波のように押し寄せてきた。
「・・・だって・・・」
潤んだ瞳をさらに潤ませて俺を睨みつけてきた。
「俺・・・あーゆーまどろっこしいのダメなんだよ」
そんな顔も可愛いな、とか思っても今は言える雰囲気じゃない。
「・・・分かったよ。明日一緒に捕まえに行こう」
ゼルに泣かれるのには弱いんだ。
「ホント!?やったぁ!!」
今度は、辺り一面を飛び跳ねて全身で喜びを表す。
大きな瞳を細めて、口唇から可愛らしい犬歯を覗かせている。
「約束だからな!絶対忘れるんじゃねぇぞ!」
「あぁ」
俺がゼルとの約束を忘れるわけないだろう。
「スコール!」
待ち合わせの時間より10分も早く来たのに、ゼルはもう俺を待っていた。
「ずいぶん早いな」
「チョコボに乗れると思うとなんか興奮しちゃってさぁ。眠れなかったんだ」
ゼルは嬉しそうに「スコールこそ早いじゃん?」と聞き返してきた。
「お前を待たせたくなかったしな」
結果的には待たせてしまったみたいだが・・・。
「!!・・・エへへ。なんか嬉しいや。・・・本当は俺、スコールと出掛けるのすごい嬉しくて、あんまり眠れなかったんだ」
そう言って照れ笑いをするゼル。
そんな顔されると、思わず抱きしめたくなるじゃないか。
「俺もだ」
抱きしめたい気持ちを抑えて、ゼルの金髪に手を伸ばし頭を撫でる。
ゼルは子供扱いするなと言うが、俺は気に入っている。
ゼルの髪の毛は細くて柔らかい。まるでシルクに触れているようだ。
「あっ、じゃ、早く行こう!!」
ゼルは頬を赤く染めて俺の手をどかそうと苦戦している。
俺はそんなゼルを見て軽く笑いながら「そうだな」とつぶやき、周りに人がいないことを確認すると、ゼルの髪の毛にキスをした。
人前でしようものならしばらく口すらきいてもらえず、今日のデート(チョコボ捕獲ともいうな)も取り止めになり兼ねない。
「あ、お兄さん。またチョコボゲットしに来たの?」
森に着くと、いつものようにちょこ坊がいた。
いつもなら気にもしないんだが、今日は邪魔だ。
「・・・おい、今日は貸切にしてくれないか?」
楽しそうに森中を駆け回っているゼルに気づかれないように、ちょこ坊に話しかける。
「貸切?別にいいけどぉ〜・・・いくらくれる?」
「・・・1000G」
1000だろうと10000だろうといくらでも払ってやるさ。
俺にはそれだけ価値のある時間なんだ。
「分かった。じゃあ、誰も来ないように見張っててあげるよ」
ちょこ坊は一度ゼルの方を見ると、俺に耳打ちで「声響くから気をつけてね」と言い残して森から出て行ったんだが・・・なぜ分かる?
「スコール!早く早く!チョコボ〜チョコボ〜」
・・・まぁいい。
そんな無駄なことで時間を費やす必要はないな。
せっかくゼルが喜んでるんだ、俺だって楽しみたい。
「どうやって捕まえるんだ?」
「まずはコチョコボを見つけないとな」
持ってきた笛をゼルに渡すと、その使い方を簡単に説明する。
ゼルは少しの間、首を傾げて唸っていたが「うん、分かった!」と笑顔を浮かべて、ソナーを吹きながら、森を歩き回る。
真剣そのもののゼルを邪魔しないように、俺は静かに木蔭に座り、そんなゼルを見つめていた。
笛を吹くことに集中しすぎて、時々こけそうになったり、なかなか見つからずに笛をくわえたまま口唇を尖らせたり、本当に見ていて全くあきないな。
何分かして、やっとポイントを見つけたらしく、ゼルは嬉しそうにザイナを吹いた。
すると数匹のコチョコボが姿を現した。
ゼルは更に顔を輝かせてコチョコボ達に近づく。
そして、俺の方を見て手招きをした。
「見て見て!めちゃくちゃ可愛いなぁ!!」
俺にはコチョコボを抱き上げて頬ずりをしているゼルの方がずっと可愛い。
「すげぇ。気持ちいい〜。ふわふわしてる。ほら、スコールもしてみろよ」
俺にコチョコボを渡そうとするゼルより少し早く、俺はコチョコボごとゼルの躰を抱きしめていた。
「え、ちょっと、スコール?」
「本当だ。でも、ゼルの方が気持ちいい」
驚いて開きかけたゼルの口唇をキスでふさぎ、舌をいれて口唇が閉じるのを防ぐ。
舌が触れ合うと、ゼルの躰が一瞬強張った。
俺は、構わずにゼルの口内を犯し続けた。
「ん・・・ふぅ、あ」
呼吸の乱れが、甘い声を誘う。飲みきれなくなったどちらのものか分からない唾液がゼルの首筋を伝う。
「ん・・・あ?」
不意に、ゼルの腕からコチョコボが逃げ出した。
「あ!待って」
ゼルは俺の躰を押し戻してコチョコボを追いかける。
コチョコボ・・・せっかくの雰囲気をぶち壊しやがって・・・。
「こら、逃げるなよ・・・ん?あれ・・・お前たちの母さんか?」
ゼルの目線の先の茂みの中には一羽のチョコボが心配そうにこっちを見ていた。
「・・・もう、行っていいぞ」
ゼルは目線の高さをコチョコボに合わせるようにしゃがみ込む。
「ゴメンな。俺のワガママで振り回して・・・」
コチョコボの尾羽を軽く叩いて、ゼルはその背中を見送った。
「いいのか?チョコボ・・・乗れなくなるぞ」
俺もゼルの視線に合わせるために、その場に座った。
「・・・いい。スコールのコチョコボが大きくなったら乗せてもらう」
あんなに乗りたがってたくせに・・・ったく、本当に優しいというか、情に弱いというか・・・ま、少なくとも俺のコチョコボが成長するまでゼルを繋ぎ止めることが出来るな。
「一番に乗せてやるよ」
「やった!約束だからな♪」
「それまでは俺に乗ってろ」
ゼルの躰を抱き寄せて、向き合うように膝に乗せる。
「え?え?」
「続き、しよう」
「え?えぇ!?こ、こ、ここ外だぞ!!!」
ゼルは辺りを見回して叫んだ。
「心配するな、誰もいない」
慌てふためくゼルを無視して、ジャケットを脱がす。
タンクトップの襟元から見える鎖骨にキスをして強く吸い上げる。
「あ」
すぐに反応する躰。
「ほら、ゼルだって喜んでる」
初めて抱いた時もそうだった。
あまりにも敏感に快楽を受け入れる躰。
「スコ・・・ル」
俺はその躰に夢中になった。
ゼルの肌はよく怪我をするくせにやけに綺麗で、十分に俺を熱くさせる。
「スコール、やっぱりちょっと待って」
「いやだ。もう待てない」
今更、おあずけなんて我慢できるわけない。
ゼルの胸に顔をうずめながらベルトに手をかける。
「ちょっ、スコールってば・・・え、あ、やめろってば!」
「・・・そんなに、いや・・・か?」
俺が少し困った顔をするとゼルはいつも言葉に詰まる。
そして、最後には許してしまうんだ。
「え・・・そんなにいやってわけじゃ・・・」
ほら、ゼルもまだまだだな。
「ゼル・・・好きだ」
「・・・今日だけだぞ・・・」
諦めにも似た恥じらいの表情を浮かべて、ゼルは俺と口唇を重ねた。
「スコ・・・ル」
「?・・・ゼル・・・コチョコボの羽が付いて・・・」
その黄金色の羽を指先で毛並みに逆らうように撫でる。
これは、使える・・・か?
「あ・・・なに・・・ひゃ!?」
ゼルの声が異常に飛びあがる。
思った通りの反応に顔が綻ぶ。
「はっ、ん?ス、コ・・・やっ、それ、くすぐったい!」
「さっき、気持ちいいって言っただろ?」
「ちがっ・・・あ、れは、コチョコ・・・やぁ!あ、んっ」
その羽でゼルの躰を優しく撫でる。
ヘソの窪みに毛先を立てるように触れる。
「ひぁ・・・あ、はっ」
ゼルは首を横に振りながら、俺を見つめた。
「気持ちいいだろ?」
ゆっくりとその羽を動かす。
敏感に反応する躰。小刻みに震える躰がやけに艶っぽくて、もっと遊んでみたくなる。
「いやっ、や、だぁ!」
ゼルは自分の手で顔を隠す。もっと、ゼルの顔を見たいのに・・・。
「ゼル・・・なんで隠す?」
「ばっ!・・・っなの、みたくねぇ・・・」
顔を上げた瞬間に、湯気が上がるんじゃないって思うほど頬を赤く染める。
どうやら、あれだけ嫌がっていたもの(羽で遊ばれるゼル自身)を直に見てしまったらしい・・・。
「せっかく可愛いのに」
更に沸騰するゼルをほったらかして、俺はもう自分の世界に入っていた。
「!!!おまっ・・・真顔でそんなこと言うなぁ!」
本当に可愛いんだから、仕様がないだろう。
「大丈夫・・・俺達しかいない・・・」
後はもう・・・お前達に報告する必要はない。
後日、俺宛に一通のメールが届いた。
『お兄さんへ
この間はご利用ありがとう!また何かあったら僕に言ってよね。
今度、コチョコボなんかじゃなくてチョコボの羽根を用意しててあげるよ!
ちょこ坊』
チョコボの羽か。
なかなか使い易そう・・・ってあのガキッ、覗き見なのか!?
俺の楽しみが増えたのと同時に、頭痛の種が増えたのも確かだった・・・。