【Valentineday Kiss】
机の上に散らばった、一口サイズのチョコレート。
君はその中の一つを掴み、口に運ぶ。
「チョコレートって麻薬みたいだよね」
突然、君が言った。
なんの脈略もない言葉。
「どうして?」
だから、君に問う。
君の考えてることを、ちゃんと理解したいから。
「これで好きな人を虜にしちゃうでしょ」
指についたチョコレートをペロリと舐める。
まるで、誘うような瞳を向けて。
「…岳はソレ、誰に食べさせるんだ?」
気付かないふりをして、君の誘いに乗ってみる。
「…誰がいいかなぁ」
もう一粒、チョコレートを口に含んだ君の瞳が揺れる。
「フフ…もう、決まってるんだろ」
小さく微笑んだ君が、ゆっくりと顔を寄せる。
「…クス」
そして、触れた君の口唇は、甘い甘い、チョコレート。