【月と涙と甘い罠】
 
 
 

 今夜は十五夜。

 学校の先生が言ってたんだ。

 だから、お兄ちゃんと一緒にお月見をしようと思ったんだ。

「きれぇな月」

 なのに…。

 二人ともさっきからムスッとして口も聞いてない。

「ねえ、お兄ちゃんもお父さんも見ないの?」

 原因は…ボクみたい。
 
 
 
 
 

「おじゃましま〜す」

 お兄ちゃんにそのことを言ったら、泊まりに来いって言ってくれた。

 だから、いつものように遊びに来たんだ。

「お、岳。今日は泊まっていくのか?」

 今日はお父さんのお仕事が休みみたいで、夕方なのに家にいた。

「うん。明日はお休みだしね」

「どうだ、たまには父さんと一緒に寝ないか?」

 そういえば、いつもお兄ちゃんと一緒に寝てるんだよね。

 だって、お父さん、帰ってくるの遅いんだもん。

「え、どうしようかなぁ…」

 せっかくだし…でも…。

「いい年して何言ってんだよ。明日も仕事なんだろ?」

 やっぱ、ダメっぽいなぁ。

 お兄ちゃん、変なトコでワガママなんだから。

「たまにはいいじゃないか。なぁ、岳?」

「岳は俺の方がいいってさ」

「え、あ…」

 どうしよう…始まっちゃった。

「大体、お前はそーやっていつも岳を独占してるだろう。たまには俺も可愛い息子との一時をだなぁ…」

「俺にとっても可愛い弟なんだよ!」

「ちょっと…二人とも」

 これ…始まると長いんだよねぇ。
 
 
 
 
 

 あれから、30分。

 二人とも睨み合ったままで、ボク的にはつまんない。

「…ボクはどっちでもいいからさぁ…月、見ようよ?」

 せっかく、こんなにキレイなのに…。

「「よくないっ!!」」

 しょうがないなぁ…。

「…なんでケンカするの…」

「「岳っ!?」」

「ひどいよぉ…ボクは…みんなで月が見たいのに…」

「ほ、ほら、岳。ケンカなんてしてないぞ?」

「そうだぞ!だから、泣くな!」

 …うわ、単純。

「…ホント?」

 やっぱり、親子なんだぁ…似た者同士。

「よかったぁ。じゃあ、一緒にお月サマ、見よ?」

「「そ、そうだな」」

 二人とも…そんな引きつった笑顔で無理してるのバレバレ。

「今日は3人で寝ようね」

 でも、二人の努力は認めてあげるね。

「えっ!?」

「マジでっ!?」

 …なに、その反応。

 せっかくの妥協案なのに、イヤなの?

「…じゃあ、ボク一人で寝る!」

「ちょっ、ごめん、岳」

「たまには親子3人で寝るのもいいよな!」

「…じゃあ、もうケンカしないでね♪」

「「はい」」
 
 
 

 その後、3人で月を見て、3人でオフロに入って、3人で一緒に眠った。

 今夜は月もキレイだし、たまにはこんな日もいいかなぁって思ったんだ。
 
 


父+ヤマトv岳です。
とりあえず、タイムリーにお月見話。
9月は月がきれいですね。
やっぱり、ホノボノっていいですね〜(笑)
石田父はギャグキャラ決定ですよ。
そして、石田家は高石家に振り回される運命なんだと実感しました。
小悪魔岳健在ですね。
そして、小悪魔岳を産んだ、ナツコママはもっと…?

(C) 20000906 志月深結
 

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