【夏休み】
毎日、楽しい夏休み。
朝もゆ〜っくり寝てられ…
-RRR-RRR-RRR-RRR-
…ないんだよな…。
「…はい」
いや、相手は分かってるんだ…。
『あ、大輔クン』
きっと電話口では、嫌味なほど可愛い笑顔を浮かべてるんだろうなぁ。
「…おぅ」
『今から10分以内だからね』
んで、悪魔のシッポがはえてんだよ…。
『じゃあね♪』
そのまま電話が切れる。
「いってきますっ!」
と、同時に俺はダッシュで家を飛び出すワケ。
-ピンポ〜ン-
「はぁ〜い。あ、いらっしゃい、大輔クン♪」
すごい早かったねぇ〜なんて言いながら、のん気そうに笑ってやがる。
そりゃそうだろうよ。
今日は今までで一番走ったもんな。
「た…る…おま…いち…びだす…じゃ…ぇ!」
「ちゃんと喋ってくれないと、わかんないんだけど?」
…そう思っても、まだ喋れる状態じゃないんだよ、俺は!
「ねぇ、今日は何して遊ぶ?」
俺の事はまるっきり無視で、とことん自分のペースで進んで行く。
「も…ちょ…まて…」
「…お水、飲む?」
俺は思いっきり頷いた。
ゴク・ゴク・ゴクッ!
勢い良く水を飲み干して、やっと呼吸も整った。
「お前、毎日毎日、人呼び付けるんじゃねえ!」
「…嫌なら来なきゃいいじゃない」
ぐ…それを言われると…。
「と、とにかく、朝っぱらから呼び出すのはやめろ!せめて昼とかな〜っ!?」
急に、目の前に岳の顔。
「水、こぼれてるよ」
そのまま、俺の口唇のギリギリのトコを猫みたいに舌で舐める。
「…それで?」
しかも、平然と上目遣いに聞いてくる。
…悪かったよ…俺が悪うございました。
「なんでもねぇ!」
俺は岳の躰を抱きしめて、思うワケさ。
俺は、コイツには、一生勝てないんだろうなぁ。
明日もきっと呼び出されるんだろうな…。
また、早起きしなきゃいけねぇのか…。
でも結局、俺にとっては毎日楽しい夏休みには変わりねぇ。
(C) 20000810 志月深結