【SHOCK HEARTS】
 
 
 

 岳の機嫌が悪い。
 ここ最近、一段と激しくなったような気がする。
 今日は、せっかく二人きりになれたってのに…。
「なぁ、何怒ってんだよ?」
 返ってくる答はいつも同じ。
 一度、冷めた瞳で俺を見た後"…別に"って…。
「…別に」
 ほらな。
「そんなんじゃ、わかんねえよ」
「…別にわかってもらおうなんて思ってないから」
 岳の笑顔に感情がない時は、本気で怒ってる証拠。
「じゃ、なんで怒ってんだよ。俺にわかってもらいたいからだろ」
「大輔クンには関係ない」
「…わかったよ。勝手にしろ!」
 
 
 
 

「あれ、大輔さん?なんでここにいるんですか?」
 ドアの前をウロついてたら伊織に声をかけられた。
「…ちょっとな」
 ケンカして飛び出してきたなんて言えねえだろ…。
 俺ってどうしてこう気が短いんだろうな…。
 わかってんだけどさ…岳が相手だとつい…。
「お前こそ何してんだよ?」
「岳さんに呼ばれたんです」
「は!?」
「おばさんがいらっしゃらないそうで、泊まりにと誘われたので…」
 あいつ、何考えてんだよ!
「あぁ、大輔さんも呼ばれたんですね!」
「え?あ…あぁ」
「じゃあ、早く行きましょう」
 おいおい…マジかよ…。
 
 

  - ピンポーン -
 
 

「あ、いらっしゃい。伊織クン」
 俺達を迎えたのは、岳の満面の笑顔。
 …しかも、伊織にだけ向けられてやがる。
「お邪魔します」
 …ハハ…あからさまにシカトかよ。
 こーなったら、俺だってとことんつきあってやる!
「なぁ〜伊織。今度またおばさんにかんぴょう巻き作ってもらってな!」
「え?えぇ…でも、大輔さん、あんまり食べてなかったような…」
「今度はちゃんと食うからさ!」
「あ…はい。分かりました」
 俺は伊織を連れて部屋の奥に進む。
 わざとらしく玄関に岳を残して…。
 こんなことしたら、逆効果だって…わかってんだけどなぁ。
 俺だってたまには本気で怒るってこと、わからせてやんねぇと。
 
 

「ねえ、伊織クン。ベッドと布団どっちがいい?」
 あれから、岳は本当に最低限の会話しかしてこない。
 コイツの頑固さは知ってたけど…いい加減、ムカツクを通り越して呆れてきた。
「あ、僕は布団で大丈夫です」
「わかった。あ、大輔クンは」
「俺はどうせソファーだろ」
 つい、岳の言葉を途中で遮るような形になっちまった。
「………じゃあ、お風呂入ってくる。先に寝てていいからね、伊織クン」
 …少し、きつかったか…。
 
 

「岳さんとケンカしてるんですね」
「…そんなんじゃねえよ」
 っても…あんなんで、気付かれないわけがねえよな。
「一体、何したんですか?」
 おい、俺が悪いのかよ…。
 …そりゃ、アイツが理由もなく怒るなんてことないけどさ…。
 その理由を言ってくんなきゃ、反省したくても出来ねえだろう。
「…ケンカするのは勝手ですが、他人を巻き込まないで下さいね。それじゃ、僕はもう寝ます。おやすみなさい」
 相変わらず礼儀正しい挨拶をして、伊織は部屋に入っていった。
「…おやすみ」
 手厳しい一言だぜ…。
 …やっぱり…俺が謝るしかないのか…。
 でも、理由もわかんねえのに謝るなんて納得いかねえよ。
 

  -RRR-RRR-RRR-
 

 電話…留守電になってるし…教えなくていいよな。
 …どうせ、ヤマトさんだろ。
「ただいま留守にしております…」
 俺一人の静かな空間に無機質なテープの音声が流れる。
『岳?いないのか?』
 …ほら、やっぱりな…。
『…一乗寺のことだけど…俺はまだアイツを信じられない』
 一乗寺…。
『ジョグレスの力は必要かもしれないが…岳…お前も充分注意しろよ』
 それから、いつものブラコンっぷりを披露したヤマトさんの電話は切れた。
「……一乗寺…か」
「…そんなに、気になるの?」
 振り向いたそこには、パジャマ姿の岳。
「一乗寺…一乗寺、一乗寺!最近の大輔クンはそればっかりだね」
「何だよ、それ?」
「だってそうじゃない…何をするにも一乗寺って…バカみたいっ!」
 岳は握り締めていたバスタオルを俺に向かって投げる。
「岳!」
 俺はそれを弾いて、岳の腕を掴む。
「離してよ…」
 俺を睨む眼差し。
 潤んだ瞳…まるで…。
「…妬いてんだ」
「!!!」
 岳の悔しそうな顔。
 今まで見たこともない…泣きそうな瞳で…。
「へぇ…可愛いトコあんじゃん」
 そのまま、岳の躰ごと抱きしめる。
「離して」
「やだね」
 腕の中で暴れる岳をソファーに押し倒す。
「…なにする気?」
 濡れた髪に上気した肌から微かな香り。
 岳が風呂上がりだってこと、思い出した。
「ナニする気」
「…伊織クン、いるんだよ」
「関係ないね」
 お前だって、したいんだろ?
「…嫌ならやめようか?」
 ほら…その瞳。
 俺を見る、碧い瞳。
 お前は俺を誘ってる。
「………」
 見つめあったまま、流れる沈黙。
 その肌に触れたくてたまらなくさせる。
 いつだって、俺はお前を求めてるんだから。
「…泣かせてやるよ」
 
 

 狡賢いお前の罠に、俺は触発されたんだ。
 
 

「…っ…ぅ」
 自分の指を噛んで、溢れてくる声を我慢する岳。
「我慢すんなって…声、出せ」
「…やだ…」
 小さく首を横に振る。
「お前の声、もっと聞かせろよ…」
「…やぁ…い、おりく…んが」
 瞳に浮かべた涙。
 それでも、自分を解放しない。
「へぇ…まだ俺以外の男のことなんて考える余裕があるんだ」
 何度も指で慣らしておいた小さな蕾を昂ぶった熱で一気に貫く。
「ひぃあっ!!っあ、やぁ…あ、いあぁ」
 そう…そーやって、本当のお前を見せればいいんだよ。
「だぃ…すけ…っく…も、でちゃう」
「…っと、まだ…ダメだ」
 岳の熱い躰を指できつく戒める。
「いやぁ…な、んでぇ…」
「俺のこと…信じなかった罰さ」
 そのまま、少し乱暴に腰を進める。
「あ、あっひ…い、や、いやぁ…」
 虚ろな瞳が流す涙で、岳の限界に気付く。
「俺の、こと…もっと…信じろよ」
 ゆっくりと、指の戒めを解いてやる。
 それと同時に、俺の躰ごと強く岳に打ちつける。
「だ…いすけぇ…っは、いぁあ、もぉだめぇ!」
 …俺の背中に回した指が、きつく爪を立てた。
 
 

「…岳…」
 俺達は重なり合うようにソファーに横たわっていた。
 岳の心臓の音…。
 ジョグレスなんかと比べ物にならない…リアルな音色…。
「…頼りないかもしれないけどさ…俺は、お前を守るために戦ってるんだぜ」
 俺は…ずっと、この音を聞いていたい。
「…そんなの、当たり前じゃない」
 …すっかり、いつもの岳に戻ってやがる。
「ハハ…そんだけ言えりゃ上等だな」
 でも、絶対にこの方がいいに決まってんだ。
 俺は、岳とはこーゆー関係でいたいんだから…。
 
 
 
 

 お前は、いつでも、俺の守るべき存在なんだ…。
 
 
 

 …俺を触発するのは、お前の存在だけなんだから。
 
 



7000HITゲッターの鉄プラスさんからのリクエスト。
【かっこよすぎるくらいかっこいい大輔】
ということで、大岳です!
こんなので…いいんでしょうか?
あんまりかっこよくないですね…。
どちらかといえば、鬼畜目指して…ゲフゲフッ。
すみましぇん、思いっきり返品は不可です(苦笑)
 
そして、初めてまともな大岳です(笑)
大輔、やれば出来るんだなぁ…しみじみ。
 
(C) 20001106 志月深結

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